「お金を貸したのに返してもらえない…」こんな状況は、本当に困ってしまいますよね。相手に何度も催促するのも気が進まないし、かといって放っておくわけにもいかない。そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
しかし、諦める必要はありません。この記事では、借金を確実に回収するための具体的な手順と、いざという時に役立つ法的な手段について、わかりやすく解説しています。この記事を読めば、あなたが取るべき行動がきっと見えてきます。
まずは知っておきたい!債権回収の基本と最初のステップ
債権回収とは何か?その全体像を把握
「債権回収」と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。しかし、これはビジネスや日常生活でとても身近なことです。
例えば、あなたが友達にお金を貸して、なかなか返してもらえない。このとき、あなたが友達からお金を返してもらう権利のことを「債権」、そしてそのお金を取り戻す行動が「債権回収」です。
債権には、商品の代金やサービスの利用料なども含まれます。つまり、誰かからお金や物を受け取る権利全般を指すのです。債権回収を放置してしまうと、時効によって権利が消滅してしまうこともあります。
したがって、債権回収は、法的な知識に基づいて、適切な手順で進める必要があります。

訴訟外の交渉による債権回収の具体的なステップ
ステップ1:最初の行動は「訴訟外での催促、交渉」
お金が支払われないとわかったら、まずは冷静に対応することが大切です。最初に取るべき行動は、「支払いを催促する」ことです。
ただし、ただ「払って」と言うだけでは効果が薄いこともあります。具体的には、電話やメール、書面などで、いつまでに、いくら支払うべきなのかを明確に伝えましょう。
このときのポイントは、やり取りを記録に残しておくことです。たとえば、メールやFAXで送ることで、いつ、どんな内容を伝えたのかという証拠になります。この記録は、もし裁判になった場合にとても重要な証拠となるのです。
また、当事者同士での話し合いが成立しそうな時には、裁判所の外で紛争を解決する「裁判外紛争解決手続」、通称「ADR」を検討してもいいかもしれません。代表的なものに「調停」があります。
調停では、調停委員と呼ばれる専門家が双方の間に入り、話し合いでの解決を促します。訴訟と比べて手続きが簡単で、費用も安く済み、何より当事者同士の合意を目指すため、関係性を悪化させにくいというメリットがあります。調停で合意が成立すれば、それは裁判の判決と同じ効力を持つことになります。(政府広報オンライン「裁判外紛争解決手続(ADR)をご存じですか?」)
ステップ2:内容証明郵便はなぜ強力な手段なのか
「支払いの催促をしても、なかなか応じてもらえない。」
そんなときには訴訟を見据えて、行動をしていく必要があります。そんな時に有効なのが「内容証明郵便」です。これは、いつ、誰が誰に、どんな内容の文書を送ったかを郵便局が公的に証明してくれるサービスです。(出典:日本郵便株式会社「内容証明」)
まず、内容証明郵便を使うことで、「期限の利益喪失」の証明に有効となります。「期限の利益」とは、借金などの返済において、定められた期日までは一括で返済しなくてもよいという、債務者が持つ権利のことです。例えば、100万円を毎月5万円ずつ分割で返済する契約なら、「毎月5万円を払っていれば、残りの95万円を一括で返済しなくていい」という権利がこれにあたります。
しかし、契約で定められた条件(期限の利益喪失事由)に違反すると、この権利を失ってしまいます。これが「期限の利益喪失」です。例えば、返済を数ヶ月滞納した場合、債権者(お金を貸した人)は残りの借金全額をすぐに一括で返済するよう求めることができます。
そして、期限の利益を喪失させるには、その事実を債務者に通知したことを証明することが有効となりますので、内容証明郵便が有効な手段となるということです。
さらに、この内容証明郵便を送ることで、債権の消滅時効の完成を6ヶ月間先延ばしにできます。つまり、この6ヶ月の間に次の手を打つための時間稼ぎができるのです。
このように、内容証明郵便を送ることにより、相手は「このままでは裁判になるかもしれない」と強く意識せざるを得ない状況に陥るため、支払いに応じる可能性が高まるのです。
最終手段としての法的措置:裁判と強制執行
話し合いや調停でも解決しない場合、いよいよ裁判所を使った法的措置に入ります。この段階では、「債務名義」という法的な根拠を得ることが最も重要です。債務名義とは、お金を強制的に回収するための、裁判所の確定判決などに与えられる法的な力のことです。ここでは、その債務名義を得るための3つの代表的な方法を解説します。
ステップ3:法的措置を申し立てる
「債務名義を取る」「裁判をする」と聞くと、身構えてしまうかもしれません。しかし、中には比較的簡単な手続きである、支払督促という手続きがあります。
これは、債権者が裁判所に申し立てを行うと、裁判所書記官が相手に支払いを促す書類を送ってくれます。相手が手続き期間の間に異議を申し立てなければ、債務名義が取得できます。これがあれば、すぐに相手の財産を差し押さえる手続きに進むことが可能です。(出典:裁判所「支払督促」)
もし相手が借金の存在を強く否定する場合、支払督促では解決できません。この場合は、通常訴訟という本格的な裁判手続きが必要になります。
債権者が裁判所に訴えを起こすと、裁判で互いの言い分や証拠を出し合います。最終的に、裁判官が判断を下し、確定判決が得られます。
この手続きは、解決までに時間と費用がかかることがデメリットです。しかし、金額に上限がなく、複雑な問題でも対応できるため、最も確実な方法といえます。(出典:裁判所「民事訴訟」)
「借金の金額は多くないけど、早く解決したい」という方には、少額訴訟がおすすめです。これは、60万円以下の借金を請求する場合に利用できる特別な裁判です。通常訴訟とは違い、原則として1回の裁判で終わります。そのため、非常にスピーディーに解決できます。ただし、1年間に利用できる回数に制限があることや、相手がこの手続きを拒否した場合は通常訴訟に移行してしまう点には注意が必要です。(出典:裁判所「少額訴訟」)
ステップ4:債務者の財産から回収する強制執行
裁判で債権が認められたにもかかわらず、相手が支払いに応じない。そんなときに取る最終手段が「強制執行」です。
これは、裁判所の力を借りて、相手の財産を強制的に差し押さえる手続きです。差し押さえの対象となるのは、銀行預金や不動産、給料など、さまざまな財産です。この強制執行の手続きによって、差し押さえた財産を換金し、未払いの債権を回収します。ただし、強制執行を行うには、相手の財産がどこにあるのかを特定する必要があります。そのため、事前の情報収集が非常に重要となります。(出典:裁判所「民事執行手続」)
まとめ
【まとめ】債権回収のステップと特徴
ステップ | 特徴 | メリット | デメリット |
訴訟外での交渉 | 電話・メール・書面による催促 | ・迅速な解決の可能性がある ・関係性を維持しやすい ・低コスト | ・強制力がない ・債務者が無視する可能性がある |
裁判外紛争解決手続(ADR) | 公正な第三者を交えた話し合い | ・訴訟よりも手続きが柔軟 ・非公開で進められる | ・強制力がない ・合意が成立しない場合がある |
支払督促 | 簡易な書面審査で進める手続き | ・迅速かつ低コスト ・裁判所への出廷不要 | ・債務者の異議申し立てで訴訟に移行 |
訴訟提起 | 裁判所での本格的な審理 | ・確定判決という強力な債務名義が得られる ・少額訴訟なら迅速解決も可能 | ・時間と費用がかかる ・弁護士の専門知識が必要な場合が多い |
強制執行 | 債務者の財産を強制的に差し押さえ | ・債権の確実な回収が可能 | ・債務者の財産を特定する必要がある ・財産がない場合は回収できない |
今回の記事の重要ワード
- 内容証明郵便
- 期限の利益
- 債務名義
- 強制執行
理解度チェック
以下の質問に答えて、今回の記事の理解度を確認してみましょう。
Q1:裁判を起こす前に、相手に強いプレッシャーを与えつつ、時効の進行を一時的に止める効果がある郵便物を何と言いますか?
内容証明郵便
Q2:ローンのように、決まった期日まではお金を一括で返さなくていいという、債務者が持つ権利のことを何と言いますか?
A2: 期限の利益
Q3:裁判所の確定判決のように、強制執行を行うための法的な根拠となる書類や命令を何と言いますか?
債務名義
Q4:判決などの書類があるにもかかわらず、相手がお金を支払わない場合に、裁判所の力を使って相手の財産を強制的に差し押さえる手続きを何と言いますか?
A4: 強制執行