「不倫の慰謝料って、一体いくらもらえるんだろう…?」
もしあなたが今、こんな不安な気持ちでいるなら、きっとつらい思いをされていることでしょう。慰謝料とは、相手の裏切り行為によって受けた心の傷を癒すためのお金です。
しかし、その金額がどうやって決まるのか、見当もつかないという方も多いのではないでしょうか。「慰謝料の相場はいくら?」と検索してみても、交通事故のように明確な計算式があるわけではなく、情報もバラバラで、余計に不安になってしまうかもしれませんね。
ですが、安心してください。不倫の慰謝料には、きちんと相場があり、金額を決める要素が確かに存在します。
この記事では、そんな不倫の慰謝料について、裁判所が金額を判断する際の重要なポイントから、具体的な相場、そして実際の裁判例まで、丁寧に解説します。正しい知識を身につけて、あなたが抱える不安を少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。
慰謝料額を左右する5つの重要要素
不倫の慰謝料額は、一律に決まっているわけではありません。裁判所は、被害者が受けた精神的な苦痛の大きさを、複数の要素から総合的に判断します。そのため、これらの要素を知ることが、適正な慰謝料額を理解する上でとても重要になります。
まずは、どのような要素が慰謝料額に影響するのかを見ていきましょう。

慰謝料を増額させる要素とは?
慰謝料を増額させる要素は、不貞行為(不倫)の悪質性や、被害者が受けた精神的苦痛の深刻さに関わるものです。例えば、以下のような要素が挙げられます。
- 不倫の期間や回数
- 不倫が原因で離婚に至ったか
- 夫婦間に子どもがいるか
- 不倫相手が既婚者と知りながら関係を続けたか
- 不倫をした側が反省していないか
慰謝料を増額させる要素は、不貞行為(不倫)の悪質性や、被害者が受けた精神的苦痛の深刻さに関わるものです。例えば、不倫の期間が長かったり、回数が多かったりすると、慰謝料額は高くなる傾向にあります。これは、不倫が長期間にわたるほど、夫婦関係の平和がより深く侵害されたと判断されるためです。
また、不倫が原因で夫婦が離婚に至った場合も、慰謝料は増額される傾向にあります。これは、離婚という人生を大きく変える事態に至ったことへの精神的苦痛が大きいと認められるからです。
加えて、夫婦間に子どもがいるケースも、増額の重要な要素となります。特に、幼い子どもがいる家庭では、不倫によって家庭を壊されることは、夫婦のみならずお子さんにまでも、より大きな精神的打撃を与え、苦痛を伴うといえるためです。
さらに、不倫相手が積極的に関係を続けた場合や、不倫した側が反省の色を見せない場合も、悪質性が高いと判断されます。
このように、慰謝料を増額させる要素には様々なものがあるのです。
慰謝料を減額させる要素とは?
一方で、慰謝料が減額されるケースも存在します。以下のような要素が減額の対象になります。
- 不貞行為が始まる前から夫婦関係が破綻していたか
- 不倫の期間や回数が少ないか
- 不倫をした側がすぐに反省し謝罪したか
- 被害者側が不倫相手に過剰な要求をしたか
一方で、慰謝料が減額されるケースも存在します。
たとえば、不貞行為が始まる前に、夫婦関係がすでに冷え切っていて、事実上破綻していたと判断される場合です。この場合、不倫によって壊された夫婦の平和がそもそもなかった、とみなされるため、慰謝料額は低くなります。
不倫の期間が短く、回数も少ない場合も、精神的苦痛が比較的軽微であるとして減額の対象になります。
また、不倫をした側がすぐに関係を絶った場合や、誠実な態度で謝罪をしたり、被害者側も不倫を早い段階で許したりしたケースも、慰謝料が減額されることがあります。
さらに、被害者側が不倫相手に対して、過剰な要求をしたり、脅迫めいた行動をとったりしたケースも、減額の理由になることがあります。例えば、怒りに任せて職場や自宅に現れるなどの行動をする方もいますが、このようなケースでは、不倫相手が社会的な制裁を受けたと判断され、慰謝料減額の理由となることもあります。
これらの要素は、裁判所の判例や法律の専門家の見解によって示されており、慰謝料請求を行う際には、必ず考慮すべき重要なポイントと言えるでしょう。
不倫慰謝料を大きく左右する離婚の有無
不倫の慰謝料額は、何よりも「離婚したかどうか」で大きく変わります。なぜなら、離婚は夫婦関係の破綻という、最も重大な結果を意味するからです。そのため、慰謝料の相場を知るには、まずこの二つの状況を分けて考える必要があります。
離婚に至った場合の慰謝料相場
不倫が原因で夫婦が離婚に至った場合、慰謝料の相場は100万円から300万円程度が目安となります。離婚という選択は、今後の人生を大きく変えるものです。その精神的苦痛は非常に大きいと判断されるため、慰謝料額も高くなる傾向にあるのです。
しかし、これはあくまで目安です。婚姻期間が非常に長かったり、未成年の子どもがいたりすると、さらに高額になる可能性もあります。
また、不倫した側が、被害者である配偶者に暴言や暴力を繰り返していたようなケースも、悪質性が高いとみなされ、慰謝料が増額される可能性があります。
離婚しない場合の慰謝料相場
一方、不倫が発覚しても、夫婦関係を継続する場合の慰謝料相場は、50万円から200万円程度とされています。離婚しないケースでは、夫婦関係の平和が完全に失われたわけではないと判断されるため、金額が低くなる傾向にあるのです。
しかし、これも一概には言えません。不倫の期間が非常に長かったり、被害者が深刻な精神的ダメージを負って、医師の診断書があるような場合には、慰謝料額は増額されることがあります。このように、慰謝料の金額は、その後の夫婦関係の選択によって大きく変わるのです。
慰謝料請求の具体的な判例と成功事例
慰謝料の相場や判断要素を知ることは重要ですが、実際にどのようなケースで、どれくらいの慰謝料が認められているのかを知ることは、さらに役立ちます。ここでは、裁判所の判例や示談交渉で成功した事例をいくつかご紹介します。
慰謝料額が相場以上だった判例
まずは、慰謝料額が相場以上だった判例をご紹介します。これらの判例は、慰謝料額が150万円以上と、相場の中でも高額なものであり、かつ、悪質性が高いと判断されたため、高額の慰謝料が認められています。
慰謝料180万円(東京地裁 令和5年8月7日判決)
このケースでは、不貞回数自体は4回だったものの、夫婦の婚姻期間は、13年と長く、また、婚姻関係自体は継続するものの、別居に至ったという点も評価されました。特に、不倫相手は子供が通う学習塾の塾長であり、子らの教育を委ね信頼していた被告に裏切られたという点が、悪質だと判断され、高額な慰謝料につながったものと思われます。
慰謝料300万円(東京地裁 令和4年9月6日判決)
本件では、夫婦の婚姻期間が30年だったのに対して、不貞期間が28年以上と、結婚後2年も経たないうちから、長期間にわたって不倫関係が続きました。さらに、夫婦には幼い子どもが3人いたことや、夫婦が離婚に至ったことが、家庭に与えた影響が非常に大きいと判断され、高額な慰謝料が認められました。
慰謝料300万円(東京地裁 令和3年1月20日判決)
このケースでは、不貞期間は約1年とそれほど長くはありませんでした。しかし、不倫が原因で被害者がうつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されました。また、不倫相手は配偶者の子供を出産し、被害者が不倫関係の解消を求めたものの、不倫相手はこれに応じることなく、配偶者とその子供と同居を続けていたため、悪質性が高いと判断され、高額な慰謝料となりました。
金額が小さい判例
これらの判例は、慰謝料額が50万円以下と、相場よりも低いものです。不倫の悪質性が低い、もしくは夫婦関係が既に破綻していたなどの事情が影響しています。
慰謝料40万円(東京地裁 令和4年12月15日判決)
この事案では、夫婦の婚姻期間は16年にも及んだ一方で、不倫関係は1回のみでした。また、不倫が始まる前から原告による暴力があったことや不貞行為があった1か月ほど前から別居を開始していたなど、すでに夫婦関係が破綻に限りなく近い状態であったことが考慮され、慰謝料は低額となりました。
慰謝料50万円(東京地裁 令和4年7月14日判決)
このケースでも、不貞行為が始まった時点で夫婦関係が破綻に近い状態だと判断されました。また、不貞期間が約1年と比較的短く、原告も浮気をしていたなどの事情があったことや、原告が裁判で本人尋問に出頭しない、不貞当時の婚姻状態の説明を適切にしなかったことも、慰謝料が低額になった理由とされています。
まとめ
記事の重要なキーワード
- 慰謝料:相手の違法な行為によって受けた精神的な苦痛に対して支払われるお金。
- 慰謝料の増額要素:不倫の期間や子どもの有無など、慰謝料の金額を上げる事情。
- 慰謝料の減額要素:不倫が始まる前の夫婦関係の破綻など、慰謝料の金額を下げる事情。
理解度チェック
Q1. 不倫の慰謝料は、必ず同じ金額がもらえるのでしょうか?
A1. いいえ、違います。慰謝料の金額は、個々のケースによって大きく変わります。慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛の大きさや、不倫の悪質性を総合的に判断して決まるため、増額・減額要素が金額に大きく影響します。
Q2. 慰謝料の増額要素を2つ挙げてください。
A2. 例えば、不倫の期間が長かったり、夫婦間に幼い子どもがいたりすることです。これらの要素は、不倫の悪質性や被害者の苦痛の大きさを証明する上で重要となり、慰謝料が増額される理由になります。
Q3. 慰謝料の減額要素を2つ挙げてください。
A3. 例えば、不倫が始まる前から夫婦関係が破綻していたことや、不倫の期間が短く、回数も少ないことです。これらの要素は、不倫の悪質性が低いと判断され、慰謝料が減額される理由になり