不倫慰謝料

不倫の証拠集め、何が必要?慰謝料請求で負けない証拠の種類とは?

もしパートナーの不倫がわかったら、あなたはきっと大きなショックを受けていることでしょう。その怒りや悲しみをどうしたらいいのか、途方に暮れていませんか?

そんな時、冷静になって考えるべきなのが、慰謝料を請求するために必要な「証拠」です。不倫の慰謝料請求では、感情的に訴えるだけではだめです。相手は不倫の事実を否定するかもしれませんし、話し合い自体がうまくいかないこともあります。

そのため、あなたの主張が正しいと証明できる、動かぬ証拠が絶対に必要になります。でも、どんなものが証拠として使えるのか、よくわからない人も多いはずです。

この記事では、不倫の慰謝料請求で使える証拠を、その強さや有効性ごとに分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、慰謝料請求を有利に進めるための第一歩を踏み出せるはずです。

不倫の証拠、なぜ絶対に必要なの?

不倫の慰謝料を請求するにあたって、なぜ証拠が不可欠なのでしょうか?
感情的に相手を責めても、話し合いはなかなか進みません。
実は、法的な手続きにおいても、あなたの主張を裏付けるものがなければ、慰謝料の獲得は非常に困難なのです。

感情論はNG!証拠がなければ言い逃れされる

慰謝料を請求されたとき、相手はすんなり非を認めないケースが多いです。証拠がないと、「そんな事実は存在しない」「単なる冗談だった」と否定されてしまう可能性があります。

しかし、客観的な証拠があれば、相手は言い逃れできません。不貞行為の事実を突きつけられた相手は、動揺し、観念することがほとんどです。

だからこそ、最初にしっかりと証拠を集めることが、交渉を有利に進めるための第一歩となります。感情的な衝突を避けるためにも、冷静に証拠を準備することが重要です。

裁判で証明する責任はあなたにある

もし話し合いがうまくいかず、裁判に発展した場合、不倫の事実、法律で言うところの「不貞行為」があったことを証明する責任は、慰謝料を請求する側にあります。この責任は「立証責任」と呼ばれています。

裁判所は、感情的な主張や噂話で判断を下すことはありません。あくまでも、提出された証拠に基づいて事実があったかどうかを判断するからです。そのため、どんなに不倫が事実だとしても、それを証明できる証拠がなければ、「不倫はなかった」と判断されてしまう可能性があります。

たとえば、民事裁判では「当事者が主張する事実を自ら証明しなければならない」という原則があります。これは特定の条文として明記されているわけではありませんが、日本の裁判制度における基本的な考え方です。「不倫の慰謝料とは? 慰謝料の定義と法的根拠、4つの条件を解説します」でも紹介しましたが、不倫の慰謝料請求では、不貞行為の存在、それによって精神的な苦痛を被ったこと、そして相手の故意・過失などを、すべて原告(慰謝料を請求する人)が証明しなければなりません

したがって、裁判で勝つためには、質の高い証拠をしっかりと集めておくことが不可欠です。

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証拠の質が慰謝料の金額を左右する

証拠は慰謝料の金額にも直接影響します。「不倫の慰謝料請求、相場はいくら?慰謝料額の算定基準と判断要素を徹底解説」でも解説した通り、不倫の期間が長かったことや、何度も不貞行為が繰り返されていたことを示す証拠があれば、それだけ精神的な苦痛が大きかったと判断されやすくなります。これにより、認められる慰謝料の金額が増額される可能性が高まります。

一方で、証拠が少ない、あるいは不十分な場合、相手が「単発の過ちだった」などと主張すれば、慰謝料の金額が低くなるリスクもあります。

したがって、より多くの、そして質の高い証拠を多く集めることで、慰謝料を勝ち取ることができる可能性を高められるのです。

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証明したい事実を直接的に証明できる「直接証拠」

慰謝料請求において、最も大きな力を持つのが「直接証拠」です。直接証拠とは、証明したい事実(主要事実、または要証事実)を直接的に証明できる証拠のことです。証拠の内容が、そのまま裁判で不貞行為した事実と直接的と結びつくため、非常に強力な証拠となるため、相手の言い逃れを許しません。

では、どのような証拠が直接証拠に該当するのでしょうか?

不貞行為を直接証明する決定的な証拠とは?

最高裁判所昭和48年11月15日判決でも示されている通り、不貞行為には、「配偶者のある者が配偶者以外の人と自由な意思に基づいて肉体関係を持つこと」という定義があります。

それを立証するために最も強力な証拠は、肉体関係を持っていることが誰が見ても分かるような証拠を出すことです。具体的には、性行為中の動画や画像があれば、それだけで不貞行為の事実は十分に立証できると言えます。

ただし、そのような肉体関係を持った瞬間の写真や動画を取れる可能性は極めて低く現実的ではないと思うのは当然です。

そのため、実際に利用できる証拠としては、肉体関係を持っていることが強く推認されるものであれば足ります。例えば、ラブホテルへの出入りを写した写真や動画は、肉体関係があったことを強く示唆する強力な証拠です。他にも、旅館やホテルでの宿泊を証明できる写真や動画も、裁判でも重要な証拠として扱われます。

自白も有効な証拠になる

不倫の事実を相手に問い詰め、自白を得ることは、慰謝料請求における決定的な証拠になり得ます。中世ヨーロッパでは「自白は証拠の女王(Confessio est regina probationum)」といわれたように、自白は非常に高い証拠価値を持つとされているのです。

自白が「証拠の女王」と呼ばれるほど価値が高いのは、当事者自身が不貞行為の事実を直接認めているからです。通常、人は自分に不利な事実を認めることは少ないため、自白という供述は真実である可能性が極めて高いと判断されるのです。

ただし、自白を口頭で得ただけでは、後から「そんなことは言っていない」と否定されるリスクがあります。そのため、自白の証拠価値をさらに高めるためには、記録に残すことが非常に重要です。不倫の事実を問い詰める際の会話を録音・録画することは、相手が自白した動かぬ証拠となります。また、念書・誓約書を書かせることも効果的です。

これにより、相手が自らの意思で不倫を認めたという強い意思表示となり、高い証明力を持つことになります。

直接証拠に関する具体的な判例

宿泊やラブホテルでの宿泊が、不貞行為があったものと認めるのが相当であり東京地方裁判所令和3年10月21日判決

東京地方裁判所令和3年10月21日判決は、「不貞行為立証の重要性」がよくわかる最近の判例ですので、ご紹介します。

本件では、夫である原告は、妻と少年サッカークラブのコーチである被告が不貞行為をしたとして、慰謝料などを請求しました。これに対し、被告と妻は不貞行為の事実を全面的に否定しました。

しかし裁判所は、原告が提出した平成30年12月の泊りがけの温泉旅行の事実、平成31年4月のラブホテルへの3時間半の滞在の事実を基に、「不貞行為があったと認めるのが相当」と判断しました。

この判決は、不倫の慰謝料請求において「不貞行為の証明」がいかに重要かを示しています。また、被告側がこれらの行為について説得力のある説明をせず、不貞行為を否定するに足る証拠も提出されなければ、たとえ不貞行為がなかったという主張をしても、裁判所からは認められないという点にも注目するべきでしょう。

ラブホテルに宿泊しても不貞行為が認められなかった福岡地方裁判所 令和2年12月23日判決

一方、福岡地方裁判所令和2年12月23日判決(令和元年(ワ)第3943号)(判例タイムズ1491号195頁)でも、被告と夫が複数回ラブホテルに滞在したり、宿泊を伴う旅行をしたりした事実が認められました。しかし、裁判所の判断は異なりました。

被告側は、不貞行為を否定した上で、ラブホテルや宿泊は「アダルト・チルドレンの相互学習」のためであり、DVD鑑賞や議論をする場所として利用したと主張しました。また、料金が安く抑えられるという合理的な理由も示しました。

この点につき、裁判所は、「不貞行為があることを強く推認する」と認めた一方で、この被告の主張を「通常とは異なる事情があった」と判断し、「およそ合理性のない弁解と断定して直ちに排斥することはできない」としました。さらに、2人のLINEのやり取りに「性欲と闘っている」や「(不貞行為は)だめなことだ」といった内容があったことを重視し、肉体関係がなかった可能性を否定できないと判断しました。

ただし、本事例は、かなり特殊な事例であることは否めません。このくらい具体的かつ特殊な事情がある事例でないと、ラブホテルや宿泊を伴う旅行などは不貞行為があったとみなされる可能性が高いと考えられます。

証明したい事実を間接的に証明する「間接証拠」

間接証拠は、証明したい事実を直接証明することはできませんが、その事実を推測させる別の事実(間接事実)を証明する証拠です。複数の間接証拠を組み合わせることで、最終的に証明したい事実を強く推測させます。
これらの証拠は、直接証拠ほどではないにせよ、慰謝料請求の説得力を高める効果があるため、重要な証拠となります。

LINEやメールでの性行為の感想等は強めの証拠

間接証拠(状況証拠とも呼ばれます)は、主要事実を直接証明するのではなく、別の事実を証明することで、主要事実を推測させるものです。不貞行為をうかがわせるLINEやメール、SNSのやり取りは、強力な証拠に変わる可能性があります。

たとえば、「セックスが気持ちよかった」「ラブホテルが良かった」「泊りの旅行が楽しかった」などというメッセージは、確かに肉体関係があったことを強く示唆します

他にも、日記や手帳などに不貞相手との旅行やホテル利用、性行為の記録があれば、証拠としては十分強いものになるでしょう。

しかし、このメッセージ自体が性行為の瞬間を捉えたものではないため、あくまで「間接証拠」に分類されます。

金銭や行動の記録も間接証拠となる

クレジットカードや銀行送金の利用明細も重要な情報源です。
不倫相手への高価なプレゼントの購入履歴や、ラブホテルの利用履歴、あるいは遠方への旅行代金なども、不貞行為の存在を間接的に立証したり、損害の立証に役立つ証拠になり得ます。

GPS等で、ホテルや外泊、相手方の家に行っているなどの情報がつかめることも、証拠として使えるかもしれません。

さきほども上げたLINEやメール、SNS、日記や手帳と言った文書で記録が残っている場合も、関節証拠として使えるでしょう。

間接証拠は組み合わせることで強力な証拠となる

このように、直接的な証拠がなくても、複数の状況証拠を組み合わせることで、裁判でも通用する強力な証拠を作り出せる可能性が上がるのです

例えば、日記や手帳に「〇〇へ旅行へ行った」という記録があり、GPSで旅館に泊まっていることは発覚している。同日に、二人で写っている写真もあった。という事例であれば、「この二人は旅行へ行って宿泊している可能性がある?」と推認させる証拠になるかもしれません。他にも、GPSで車がホテルに止まっていることを確認し、車がラブホテルに止まっている写真があり、クレジットカードの決済明細が重なれば、ラブホテルを利用したことは間違いないと思うでしょう。

また、クレジットカードや送金履歴と言った金銭的な記録は、損害の大きさを示すためにも使えます。例えば、相手方の女性に多額のお金を渡していたり、プレゼントの購入記録が残っていたりした場合、夫婦関係の破綻原因として影響がなかったとは言いずらくなるでしょう。

このように、一つ一つは弱い証拠でも、間接証拠は組み合わせることで強力な証拠となることや、慰謝料額を増額させる理由となり得ることは知っておいた方が証拠収集に役立つでしょう。

まとめ

重要キーワード

  • 立証責任
  • 直接証拠
  • 自白
  • 間接証拠

理解度チェック

Q1.不倫の慰謝料請求において立証責任は誰が負いますか?

答 慰謝料請求をする方

Q2.直接証拠とはどのようなものでしょうか?

答 証明したい事実を直接的に証明する強い証拠のこと

Q3.直接証拠の具体例にはどのようなものがありますか?

答 性行為中の動画や画像、泊りがけの旅行の事実、ラブホテルの滞在、自白など

Q4.自白は証拠として有効ですか?

答 有効

Q5.間接証拠とはどのようなものでしょうか?

答 証明したい事実を間接的に推測させる証拠

Q6.間接証拠はどのように使えば効果的ですか?

答 組み合わせること(事実の証明や推認に役立つ可能性が高まる)